2019年8月25日日曜日

ニルヴァーナ、カート・コバーンに学ぶ作詞作曲術

自ら作詞作曲をしているバンドマンやシンガーソングライターは多いと思います。

他の人がどうやって作詞作曲をしているか、気になると思います。


今回、ニルヴァーナのカート・コバーンを例に、どうやって作詞作曲をしているか学んでいきましょう。

→なぜニルヴァーナのカート・コバーンなの?
そんなに詳しいの?


はい、本を1冊書けるくらいは多分、詳しいです。

ニルヴァーナは全曲聴いたし、ブートレグも漁ったし、伝記本2冊と関連書籍をほぼ全て読んだし、主要インタビューも雑誌でほぼ読んだし、
第一回に取り上げるに最適だと思ったからです。



さて、本題。

NIRVANA=カート・コバーンのイメージがほとんどだと思うが、
これは合っているようで合っていない。
元ソニック・ユースのサーストン・ムーアがインタビューで、
「みんなニルヴァーナ=カート・コバーンだと思ってるけど、彼らはバンドとして最高なんだ」
と発言していた。
つまり、ベースのクリス・ノヴォゼリック、ドラムのデイヴ・グロールがいてこそ、
ニルヴァーナは成り立つという意味だと思われる。


ニルヴァーナは一部を除いて、カート・コバーンが作詞作曲というクレジットになっている。
カート・コバーンはどのように作詞作曲をしていたのか。

ほとんどのソングライターと同じで、曲が先、詞は後だったようだ。

そしてそれをバンドでジャムって完成させていた。


また、大きな特徴として、ほぼ全てのギターフレーズが
パワーコードで出来ている。

パワーコードはルート音と5度だけを押さえる形になるため、
コード自体がメジャーコードかマイナーコードか決定付ける音が無い。
つまり、伴奏の上に乗るヴォーカルメロディはメジャーでもマイナーでも良い。

これがカート・コバーンの作曲術である。


終わり。


と行きたいところだが、例を上げて説明していこう。



Nirvana - Smells Like Teen Spirit
 
イントロとサビのコードは同じ。4つのみ。
それにブラッシングで表情を付けている。
彼の利き手、左手のピッキングは器用なのだ。

メロは単音2つのアルペジオにエレハモのSmall Clone(コーラス)をかけて揺らして
表情を付けている。
(誰でも知っていると思うので、押さえ方は省略する。)

これだけ。

たったこれだけだが、
こんな作曲をする人は1991年以前にはいなかった。

なんせ音楽理論無視のコード進行である。
(音楽理論もキリがないので省略するが、今回は"耳障りがいいコード進行"とする。)
そこにわかりやすい、ポップなメロディーが乗っている。

なんのことやらさっぱりだが?と思われるので
比較として、Smells Like Teen Spiritがヒットした時に、
この曲のパクリでは?と言われた曲を聴いてみよう。


Boston - More Than a Feeling
 
イントロのギターアルペジオは、
D-Dsus4-D-C-G
となっている。
非常にわかりやすい。
メジャーコード(長調)、明るい曲調だとわかる。


戻って、
Smells Like Teen Spiritはイントロのギターだけではメジャーコードかマイナーコードかの判別がつかないまま、メロに突入する。

ベースはどうか。
実はベースもルート音とコードチェンジの際の経過音しか弾いていない。

サビ以外のメロもルート音と5度の音を弾いてるだけ。

どこにもメジャーコードとマイナーコードを判別するものがない。


カート・コバーンの歌うメロディーだけが、
メジャーコードかマイナーコードか
明るい曲か暗い曲かを決めるのである。

ヴォーカルメロディーはメジャーとマイナーの間を行き来出来て、
自由度が高い。
そこにはセンスが問われる。

カート・コバーンのメロディーセンスは
子供の頃から聴いてきたKISSやエアロスミスなどのポップな音楽の影響を大きく受けている。
また、学校や仕事に馴染めなく、メルヴィンズのバズ・オズボーンとその近辺のパンクロックコミュニティだけに属していた。
(ここで言うパンクロックはグリーン・デイやSUM41のようなポップ・パンクではない。
どちらかと言うとハードコアだ。)
パンクロックの暗いメロディーにも大きく影響を受けている。

それらの要素が集まった結果、Smells Like Teen Spiritにつながったのだ。



それがわかったところで、カート・コバーンの作曲術を掘り下げてみよう。

この曲はボックスセットに音質が極端に悪いがデモがある。

Smells Like Teen Spirit (Rehearsal Demo)

 聴いてみるとわかるが、
1.歌い出しのメロディが違う
2.なんか歌詞モゴモゴ言ってて聴き取れない
3.構成が一部違う
4.ソロがない


解説していこう。

1.歌い出しのメロディが違う
あれ?と思った人が多いはず。あの有名な歌い出しのメロディはあとで変更されたのだ。
カート・コバーンがコードが先にあって、メロディーを変えて作っていくことがわかる。

2.なんか歌詞モゴモゴ言ってて聴き取れない
歌詞が決まっていない部分はハッキリ発音していないのでモゴモゴ言っているのだ。w
曲(メロディー)が先、歌詞が後なのがわかる。

3.構成が一部違う
Hey!前後の位置が違う。
このアレンジのアイデアはアルバムNevermindプロデューサーのブッチ・ヴィグ。
「同じものが続くと飽きるので、最後にあったものを真ん中に持ってくるようにアドバイスした」
とのこと。
確かにHey!のパートが1番と2番の中間にあるので、曲の構成がわかりやすくなっている。

4.ソロがない
あの印象的なソロのアイデアもプロデューサーのブッチ・ヴィグ。
カート・コバーンがソロのフレーズに迷っているときに
「ヴォーカルのメロディーを弾いてみたら?」
と助言したとのこと。
ヴォーカルメロディをなぞるとダサくなりがちだが、なぜかカッコよく聴こえるのはメロディが良いからだと思う。

3.4.は「クラシック・アルバムズ : ネヴァーマインド 」というDVDに解説があるので興味がある方は観てみると良い。
ある曲のギターソロだけをブッチ・ヴィグが再生してくれたり、レアなものがたくさんある。



こんなところか。

参考になっただろうか。

他のバンド、シンガーソングライターの作詞作曲術も機会があったらやります。

ネタはたくさんあるので。

(^o^)/ではでは





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